「どれ」(叫ぶ呼ぶ)

 

(場面設定)

AはBにものを持ってきて欲しいと頼んでいる。


作業中×暇人

A「ねえ、ちょっといい? 今手が離せないの」
B「なに?」
A「ちょっと持ってきて欲しいのよ」
B「どれ?」
A「それ」
B「それ?」
A「急いでくれる?」
B「はいはい、自分で持ってきてよねえ、まったく」
A「ちがうわよ」
B「はい?」
A「わたしが持ってきて欲しかったのはそれじゃないわ、蓋が赤いヤツよ」
B「えー、これじゃないの?」
A「ちがう。それは戻しといて」
B「もー、最初からわかるように言ってよね」
A「ごめんごめん
B「蓋が赤いヤツ赤いヤツ。ねえ」
A「なに?」
B「どっち?」
A「どっち?」
B「蓋。赤いの。二つあるけど」
A「ええ? 開いてないほう」
B「どっちも新品だけど?」
A「あー、重いほう」
B「わかんないよ」
A「じゃあ二つとも持ってくればいいじゃない」
B「持てない」
A「持てない? もー、非力なんだから」
B「非力に運搬を頼まないでよ」
A「じゃあ心がときめいたほうを持ってきて」
B「はーい。じゃあこれでいいか。ただいまお持ちします」
A「これじゃないわよ。センスなし子」
B「文句言わないでよ。あとこのセンスない容器はアンタのセンスでしょうが」
A「もういい。自分で行くわ。ちょっとそれ見てて」
B「あ、ちょっと」
A「(遠くで)あれこれでもない、それでもない」
B「ねえ、見ててってどれ?」
A「だからそれえ!」 

狙い

 距離感と「うんざりしてきて上がる声量」をテーマにした台本。途中で距離が近くなってからの会話をする箇所と、最後の立ち位置が逆転するシーンをきちんと演じきりたい。最後のオチは遠くのまま叫んでも、ドタドタと走り戻ってきても。あえて長音(ー)や感嘆符(!)は記載していないので、各自で補って欲しい。

 リズムの緩急をうまくつけたり、途中に思い出す描写やめんどくさがる吐息など、要所要所で工夫を凝らさなければ、台本自体が具体的な内容のない薄味のものなので聞けたものにならない虞が高い。AがBから受け取るセリフで明確に場面転換のように区切りのリズムを作りやすい構造であり、且つBのセリフによってAとの距離感が決まるため、割とAのほうが難しい。BもBで適切な距離感で仕掛ける必要があるが。

やり方など

・Aは料理中(以外のシチュエーション:たとえば拷問中、手術中、飼育中、トイレ中など)

・AとBを引き止めるのが目的、あるいはBはAを引き止めるのが目的

・AとBはバイトなど職場における上司と部下


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