「配給」(嘘)

A・・・・(嘘をつく側)

B・・・・(嘘をつかれる側)

 


兄×妹

A「ただいま」
B「おかえりなさい、お兄ちゃん。ご飯は?」
A「ああ、もらえたぞ」
B「え、これだけ?」
A「今はどこも苦しいんだ。パン一個でも配給がもらえるだけでも我慢しなきゃな」
B「うん」
A「それでな、兄ちゃん今日はちょっとお腹痛くてな、これ全部食べていいぞ」
B「ほんと! うそ。お兄ちゃん、こないだもお腹痛かった」
A「ははは、もしかしたらなんか病気なのかもな」
B「やだ」
A「あ、うそうそ! そうじゃなくて、昨日水を飲みすぎたんだ! ほら、暑かっただろ」
B「お兄ちゃんまで病気で死んだら。いや。いやなの。あれ……お兄ちゃん、怪我してる?」
A「あ、これな。ちょっと転んだだけだから」
B「ほっぺた。冷やしたほうがいい?」
A「大丈夫、大丈夫だから。ほら、パン食べろ。千切ってやろうか?」
B「いい。お兄ちゃんも食べて」
A「だから、兄ちゃんはいいって」
B「いや。食べてくれなきゃ、いや」
A「わかったよ、じゃあ一口だけもらうな」
B「うん。端っこの美味しいところあげるね」
A「ありがとう」
B「お兄ちゃん、せーので食べよ」
A「ああ」
A「せーの(食べる)」
B「せーの(食べる)」
B「おいしいね」
A「ああ、おいしいな」
B「じゃあ、ごちそうさましよ」
A「おいおい、まだ残ってるだろ」
B「これは明日食べるの」
A「明日?」
B「明日。お腹が治ったお兄ちゃんと半分こ」
A「いや、明日はまた配給もらってくるから、な? 今食べな」
B「ううん。最近噂で聞いたの、配給が来なくなるんじゃないかって」
A「誰がそんなこと言ったんだ。ただの噂だよ」
B「そうかな?」
A「そうだよ。ほら、パン食べてもう寝よう。兄ちゃん、明日もパンもらってくるから」
B「うん、わかった。お兄ちゃん」
A「うん?」
B「ありがとね」
A「おう」

狙い

嘘をつく原稿。自分は食べていないのに、食べたと言い張る兄をどう演じるのか。というのが表向き。「配給なのにパンをひとり分しかもらってない」「転んでできたという頬の傷」「明日もパンをもらうというセリフ」から、兄がパンを盗んできたという点に気づいたあなた、さすがです。嘘と盗みの罪悪感をどこまで演じるか、妹も嘘に騙される罪悪感をどこまで感じるかという台本。

やり方など

・兄は実は配給をすでに食べたあと。最後の一個(最低限)を残しただけ

・すでに配給はなく、兄はパンを盗んできた

・兄は明日妹を捨てようと思っている

・妹は兄の嘘に気づいている

・妹は兄の嘘に気づいていない

・妹は兄にやめてほしいと思っている

・お互いが嘘に気づいていないふりをしていることに気づいている


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