(場面設定)
相手の言葉を受けて、会話を切り上げようとしている。
「わかった。おまえが俺のことそんな風に思ってたってのはよくわかった。いつからだ、って訊くのも野暮か。ずっとだったってことだもんな。いい。いいよ。弁明の言葉並べられても、しんどい。入ってこないよ、耳の奥に。ずっと頭の中でぐるぐるしてんだ、おまえのさっきの言葉。ちょっと一人になりたい。来んなよ、こっち」
頭の中に先ほどの発言があって、それを噛み砕いている最中=言葉を組み立てられず、切れ切れの台詞となっていることを読解した上で演じたい。どこまで怒りや拒絶をにじませるかだが、頭の中で整理がついたタイミングを明確に定めてみると、一本調子にならずに済む。
「おい、ケンタの前でそんな言い方はないだろ。ケンタちょっと向こう行ってなさい。母親としての自覚があるなら、さっきの言葉は出てこないんじゃないか? はあ。だんまりか。言いたいことがあるなら口で言えよ。さっきみたいに。どうした? パパもママと一緒で口は動かないから喧嘩じゃないよ、さ、食べようか」
苛立ちをぶつける相手と慈しみをぶつける相手への演じ分けを要求する台本。最後の台詞は妻、息子双方へぶつける台詞になるため、比率をどちらに傾けるかで色の出る構成。どうした? の台詞は妻と息子どちらにぶつけたか。(台本ではどちらにもぶつけられる構成になっている)
それはそれとして、これは大変ふざけていますが、「ケン○ッキーパーティを催した旦那に対して『マ○ドナルドがよかったな』と呟いた妻」というシチュエーションで遊んでみてください。……生産性はありませんが。
「然(しか)らば、議論は終了ということでよろしいか。この講堂に集った128名が証人だ。あなたのその不遜な言葉、取り消す気はないのだろう? ああ結構、顔に書いてある。頭を下げるのはおまえだこの青二才が。青二才で結構、我々は若さという青天井の可能性を秘めている。議長、そして傍聴の諸君、私はここに閉会を申し出る」
芝居がかった話と、空間(講堂の広さ)を意識したしゃべり方で相手を圧倒するという主旨のシーン。扇動的なしゃべり方と、相手方に舐められることなく場を収めることがこのキャラの目的である。キャラ設定として「自分が議論で負け筋になったからブラフで仕掛けている」など設定を詰めて臨んでみても。
「いっつも『黙れ』が口癖だったお前がよお、すっかり静かじゃねーの。返事が返ってこないのって、案外つらいもんなんだな。やっぱり黙らなかった俺は大正解だったってわけだ。なんか言えよ。黙ってんじゃねえよ。俺はお前に『黙れ』なんて言ったことは一度もねえぞ。じゃあおまえの真似をしてやるわ。『黙れ』」
台本上では墓石に話しかけている描写がないため、完全に演技として遊ぶようの仕上がりにはなっている。もし必要であれば2文目に「墓石の下は居心地いいか?」とか差し込んでみるとよいかと。
死者は返事をしないとわかったうえでこの台詞を言うキャラクターの心情をしっかりと演技に乗せて欲しい。「俺はお前に『黙れ』なんて〜」の台詞が一番感情を乗せやすいと思うが、最後の『黙れ』は別人のように演じるのか、それともうまく真似できず、人の良さが拭いきれず、涙で震えてなのか——これ以上を乗せるのか、という短いが故の最高難易度であると思う。がんばってください。
(作者は『黙れ』と言うことで、相手が言葉を発せない状況であることの罪を半分自分が背負ってあげているという意図を最初に考えました。ほかにも返事がこないこの状況への合理化であったり、単に苛立ちの発散、これからは俺がおまえになるという決別など、色々解釈できるから困りますよね本当に)