「ここで泳いではいけませんよ。このため池は地域で火事が起きたときなんかに備えて貯められているもので、とっても深いんです。みなさんじゃ足がつかないくらい深くて簡単に溺れてしまうんですよ。わたしもみなさんくらいのときに大人の人から言われたものです。溺れるのは恋と青春だけにしておきなさいって。あれ? みなさんどこにいきました?」
話しているキャラクターの設定を持って臨む台本。新人なのか、逆にベテランなのかで話し方も変わってくる(最後の小ボケの意図が変わる)。台本から聞き手が子供であることをきちんと読み取ったうえで、語り方も調整したいところ。
「ご迷惑をおかけしております、現在ここは工事中でして。迂回路は手前の交差点を右にお願いします。何の工事かですか? みなさまの生活を豊かにするものです。ご迷惑をおかけします。あの、そんなに覗き込まれましてもここは通行止めです。ご迷惑をおかけしますね。その、ご迷惑をおかけします」
「何の工事をしているかは知らされていない、あるいは話してはいけない」という制約のもとで、相手を引き返させるという目的を持ったキャラクターであることを読み取りたい。そんな中で「ご迷惑をおかけします」という一枚の手札だけで押し切る彼(あるいは彼女)をうまく演じたいところ。勿論、その手札の使い方や演じ分けが肝。
「きみはここの生徒じゃないよね、はやくお帰り。今日は同窓会だからね、関係者以外は立ち入り禁止だよ。OBだって? 嘘をついちゃいけないよ。だってだれも卒業できてないんだから。なーんて、冗談ですよ、危ないですから早く立ち去りましょう? 敷地の外まで出れば、ちゃんと家に帰ることはできますから、まだ」
前半と後半で明確に色が変わる台本。切り替えにあたる「なーんて」をうまく使って緩急を出したい。「立ち去りましょう」という少し語気の強いワードもうまく使いたい。最後の「まだ」の使い方で文脈も変わってくるので、こちらの言葉もうまく使いたい。まだの余地が相手にあるのか、それとも自分自身にあるのかなど。
「この先立ち入り禁止です。安全が確保されるまでは近づかないでください。この先に何があるのかですか? では行ってみますか? ええ、構いませんよ。立ち入り禁止というだけで、強制力はありませんので。その際はデータ収集のためにこちらのデバイスをお持ちいただけますと助かります。どうしました? そうですか、ではお気をつけてお帰りください」
「この先に何があるのか」については聴衆にも明かされないので、うまく気味の悪さを演出することを狙っている台本。禁止と勧奨が共存している歪さも、そのおぞましさを演出する一助である。最後の「お気をつけてお帰りください」にどんな感情を乗せるか。残念なのか、安堵なのか。