語り手・・・夫
聞き手・・・妻
(場面設定)
夫が面映ゆいようなことを妻に告げるシーン。クサすぎないようにブレーキをかけることができるかの手腕を問う日常台詞。
「おっ、今日はオムライスかあ。すごい、タマゴぷるぷるだね。もう職人芸じゃない、これ? 冷めないうちに。いただきます。うん、うまい。こんなおいしいもの食べさせてもらえるなんて、オレは幸せ者だなあ。そのうちお店も出せたりして。いやダメだ。この味はおれの独占だな。……あ、ごちそうさまです」
妄想と現実、語りかけと独り言、いただきますとごちそうさまをうまく対比に使いたい。感情としては「照れ」をどこまで滲ませるかやあえて「嫌味」として遊んでみても。
「今日で一年目。あっという間だったね。どうだった、一緒に過ごしてきたこの時間は。先に俺? そんなの言うまでもなく幸せだったさ。君は? 聞くまでもないだろって? そうだね、うん、そうだ。明日からも何も変わらないさ。これまでどおりをこれからもやっていくだけか。よし、どうぞ末永くよろしくお願いします」
最初の○年目を長くしたりして遊べるような意図の台本。シンプル故にごまかしの利かない台本。
「君の気持ちがあの男のところにあって、君の決めたことが変わらないこともわかってる。だけど、君への気持ちがこの地球上で一番強いのは僕なんだ。君を愛したい。僕に愛させてください。……なんて、プロポーズのときと同じことを言って君の気持ちが変わらないかなんて、ずるいかな?」
ストレートな愛の言葉。聞き手(妻)の目線や距離などを想像しながら読みたい。妻のこと、プロポーズの言葉、自分のこと、という構成なので、うまく変化をつけたい。最後の「ずるいかな?」が本命。それ以前はその引き立てであったり、迫るように緩急の「急」にしても引き立つ。
「そこにいるかな? 手を握って欲しい。ああ、この白魚の指でピアノを弾く君の姿に、子供の時から惚れていたんだ。耳も目も神様は取り上げてしまったけれど、口だけは残してくださった。私はあなたが大好きだった。ずっとずっと大好きだった。あなたがそばにいてくれて、これ以上の幸せがあるものか。あるものか」
「目も耳もきかなくなった男」が妻に愛を伝え、幸せを伝えている台本。指で指先をなぞるという「愛を伝える行為」をすでに十全に行っている伝えている状態で、どこまで言葉に乗せるのかという加減に挑戦する台本。……どうして最後に「あるものか」と繰り返しているのか。(噛みしめている? 言い聞かせている?)