「探偵さん」(一連の流れ)

語り手・・・探偵さん

(場面設定)

事件の舞台となる旅館に来ている。 

各シーンごとに立てるべき情報をしっかり立てることに着目した台本。


登場時

「こんにちは! わあ、ここが座敷童が出るって噂の宿っすか。大正時代から建ってるなんて歴史感じるなぁ。俺、霊感とかないですけれど、ちゃんと幸せになれますかね? いいや、絶対見るね! 大丈夫、昔から近所の子供には好かれるタチだったんで。まあ何もなくても(腹の音が鳴る)……うまい飯さえ食えりゃいいか。すみません、ご飯って何時からですかね?」

狙い

「冒頭のシーン」であることを念頭に「ちゃんと幸せになれるか?」という物語のテーマについての情報と、推理パートではギャップで格好良くなること見越して、抜けたキャラとして探偵を描写している。最後の問いかけは旅館サイドのキャラへのパスにもなっている。女将さんがクスクスと笑って(業務中なのに)しまうことで互いの人の良さを出すことを想定している。


事件発生時

「見ちゃダメだ! すみません、誰か救急車と警察を。え? 電話線が切れてる? くそっ! 犯人の仕業だな。外部との連絡を取れなくしたんだ。皆さん、ひとまず一カ所に集まりましょう。もし殺人犯がまだ紛れてたとしたら危険です。誰がこの人を。この人だって、『座敷童に会って幸せにしてもらうんだ』って笑ってたのに。絶対逃がさないぜ。俺がこの手で捕まえてやる」

狙い

事件発生時の台詞。「見ちゃダメだ!」→女性や子供を庇った台詞。主人公は好感度稼いでナンボ。その後「状況説明」の台詞となる。これは視聴者に向けて情報を整理するためのものなので、しっかり聞かせる必要がある。そんな説明台詞の中でも主人公がどの時点で感情をどう整理して、どう動こうとと思ったか整理して演技したいところ。また独り言と大勢に向けて話す使い分けは言わずもがな。


調査時

「それなんだよなぁ。殺害された部屋の襖は箒が外から立てかけてあって引けないようになってたし、唯一の出入り口と言えばこの子供が通れるくらいの格子窓だけ。それこそ座敷童が犯人だって言われたほうがしっくり――ああ、ごめん。そうだよな、座敷童がそんなことするわけないよな。それに着物じゃ帯が引っかかって……帯? そうだ、帯だ! 仲居さん! 予備の着物はある?」

狙い

王道の「独り言からの着想」パターン。作者も台本書きながら「で、帯でどうするっちゅーねん!」と思っているが、なんかこううまくいくのだと思ってください。ここでも仲居さんをかばうという主人公好感度ムーブをかましつつ、今までで旅館サイドの人間に好感度を稼げていたから帯を借りるという信頼を勝ち得ている言わば伏線回収のシーン。ぶつぶつ呟きながら部屋をぐるぐるしてもいいし、窓を直接調べながらでもいいし、動きを想定しながら読みたいところ。


犯人糾明時

「すみませんみなさん、集まってもらって。もうこの犯行予告のとおりにはさせません。子供のごっこ遊びに見立てたふざけた殺人もここまです。座敷童? いや違う。誰も幸せにしちゃいない。それどころか自分自身も不幸にしちまってるんだ。もう終わらせましょう。この旅館から出て行ってもらうぜ、なあ、『血染めの座敷童さん』よ」

狙い

このあと「わ、私ですか?」と名指しされたことを驚愕&言い訳タイムとなるわけですが、完遂されない犯行予告が作中に出てくるわけがなくて、糾弾後「ふう、これでひと安心だな」→「本当に殺人が終わりだと思ったのですか?」→「なに?」→「きゃぁああああ(悲鳴)」という筋書きが進むので、このシーンでは「犯行予告のとおりにさせない」という前振りと、「犯行予告の存在(内容)」を視聴者に印象づける必要がある。それはそれとて一番格好良く決めるべき名指しシーンであることと、テーマである「そのやり方じゃ幸せになれない」という部分と、立てないといけないところがいっぱいで大変だと思いました。


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