「VS夫」(マダム)

語り手・・・嫁

聞き手・・・夫


旦那は探偵(ミステリー風)

「待って。あなたが言うその推理が正しいなら、食卓の上にはピーナッツバターがないとおかしなことになるわね。被害者はバターナイフで頸動脈を切り裂いて、そのナイフにはピーナッツバターが付着していたのでしょう? でもおかしいわね。彼、ピーナッツアレルギーなのよ。なら答えは簡単。ピーナッツバターを持ち込んだ第三者がいるのよ」

狙い

冒頭の「待って」で、聴衆を引き込んだり、場を制止する動作を入れたり導入として使いやすいワードにした。「でもおかしいわね」のベクトルを事象に向けるか、旦那に向けるか、独白とするかでも色が変わる。あとは頻出する「ピーナッツバター」をうまく使いたい。音声のみだと、このワードにより、舞台が欧米だと伝える形になる。


旦那は医者(嘆き)

「まあ、ご立派。先生は今までに何百、何千人もの患者さんたちをお救いになったものね。でも、私は救ってくれなかった。あなたが、手術室でオペをしている間、私は一人きりの寝室でずっと膝を抱えてた。心の中によくないものが溜まっていっても、吐き出すことなんてしやしなかった。別れましょう。あなたがどんな名医でも、私のコレは取り出せないわ」

狙い

旦那のことを「先生」と呼ぶ意図を考えたい。また、間を起きやすい位置を数カ所設けているので、どこに間を置くか(重きを置くか)、感情の振れ幅をどう持って行くか(上げ続けるのか、最後で落とすのか)などで、役者としての技量を試される一本となっている。


旦那は主夫(焦りとキャリア)

「きゃあ! どうして起こしてくれなかったの。気持ちよさそうに寝てた? ええ、そうね。あなたが昼間干しててくれたおかげでふかふかの毛布だったわ。そんなことより、あと二十分で会議なのよ。朝ご飯? 食べる時間ないわよ。お化粧だってできないのに。わかったわ。ベーコンがカリカリなのはわかったから。私までカリカリするなって言いたいわけね。車回してちょうだい。それは車で食べるわ」 

狙い

動作を中にちりばめやすくした。また、言外に「旦那がめっちゃ好き好きアピールしてくるやんけ」という情報を入れている。焦りつつも感謝を忘れなかったり、ジョークを挟むあたりにふたりの関係性を出している。途中でキスとか入れてもええんでねが?(車出すのくだりの前とか)


旦那は殺人鬼(うんざり)

「何度言ったらわかるの。あーあー、もうこんなに散らかして。死体をバラバラにしたからって、トイレには流せないっていつも言ってるでしょう。また壁紙を変えなきゃ。どうせ汚れるから赤一色に、いえいっそ水洗いができるようにタイルにしようかしら。あー、なんで殺人鬼なんかと結婚しちゃったのかしら。いっそあたしを殺して欲しいくらいだわ」

狙い

最後のブラックジョークに持って行くために高めていくタイプの台本。殺人鬼を尻に敷いて平然としているあたり、この女も異常である。壁紙を撫でてみたり、あー! と髪を掻き毟ったり、動作は入れやすい。聞き手の殺人鬼との位置関係も意識したいが、少なくとも女性は壁の近くにはいるはずである。「いっそ~」の前に「うるさい!」などと挟み込めば、旦那が何か主張している様子も描写可。


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