「母」

語り手・・・母

聞き手・・・子

 


出産

「本当に生まれてきたんだ。私、お母さんになったんだね。小さい手。よかった。よかったよ。ありがとう。生まれてきてくれて、本当にありがとう。私、お母さんだよ。あなたのお母さん。これから、一緒に大きくなっていこうね」

狙い

出産直後の台本。言葉は少ないが、感情を込めやすいフレーズを並べてある。


走る子供

「こらー、走らないの。ちゃんと前見て……あーあ、転んじゃった。大丈夫? ひざ、見せてごらん。……ん。血は出てない。泣かなかったね、えらいぞ。立てる? よし。じゃあ、おうちまでもうちょっとがんばろっか。ママ、ちょっと歩くの疲れちゃったから、手を引っ張ってくれると嬉しいな。おうちに着いたら、アイスクリーム、食べようね」

狙い

叱る→心配→安心→褒める→励ます→大人の知恵→ご褒美(嬉しい) という色々な種類の感情を詰めている。いずれにせよ、我が子を思う気持ちは変わらない。


走る子供、出血

「こらー、走らないの。ちゃんと前見て……あーあ、転んじゃった。大丈夫? ひざ、見せてごらん。……あっちゃあ。血が出ちゃってるね。あーあー、泣かないの。血が出て、びっくりしたね。ハンカチハンカチと……あった。ちょっと拭くからね。え? 駄目? 汚れちゃうって、ハンカチはあとで洗濯すればいいでしょ。はい、ここちょっと押さえてて。おうち着いたら絆創膏貼るからね」

狙い

「慣れた感じの母」を演出している。多少の子供のわがままにも動じないし、出先で絆創膏を買うこともない。ちょっと手慣れた母。戦術の台本との対比で演技を考える台本。


反抗期(母>子)

「アンタはいっつもゲームばかりして、ちゃんと勉強はやってるの? ……って、『うるさい』じゃないの。それに誰に向かってババアなんて口利いてるの。ババアの握ったおにぎり食べてここまで大きくなったんでしょうが。アンタがいちいちいちいち口答えしなかったら、私は近所じゃ良家のご令嬢さんで通ってるんだからね。だから、そのババアって言うのをやめなさい、クソガキ」

狙い

蛙の子は蛙。「ババアの握った~」という台詞では怒りにも呆れにも、演技がかった風にも様々な演出が可能。「いち」が四回繰り返されておりリズム感の演出も狙っている。


反抗期(子<母)

「最近夜遅くまで起きてるでしょ。ゲームばっかり。今度のテストは大丈夫なの? え、ババア? 今、ババアって言った? そんな風に言うことないじゃない。ただ、お母さんはちょっとあなたのことが心配で。……大きな声を出さないで。ウチがご近所さんからなんて言われてるか知ってるでしょう? わかった、わかったから、もうお勉強のお話はおしまい。またご飯できたら呼びに来るからね」

狙い

「勉強をさせたい」「世間体を気にする」「あなたのためだから」と、やりたいことがはっきりした母親。気弱ゆえに引くのか、ただ互いの主張が交わっていないのか。最後の「ご飯できたら呼びに~」を「服従」ととるのか「ささやかな抵抗」ととるのかもポイント。息子の言動に対し「怒らない」という関係性の演出となっている。


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