「バレンタイン」(本気度)

語り手・・・チョコを渡す女学生

聞き手・・・チョコを受け取る男子学生

(場面設定)

学校のどこかで。

 


義理(クラス単位)

「はい、これ。チョコレートだけど。ちょっと、早く受け取ってよ。あとがつかえてるんだから。クラスみんなに配ってるやつだから。変な期待はしないように。あ、でもお返しはちゃんと忘れないでよね。三倍じゃなくていいから」

狙い

全員に配る作業を事務的にやるところであったり、釘を刺すことを忘れなかったり、でもお返しは回収しようとするきっちりした面もある、打算からチョコを配るタイプ。チョコを配ることを思いやりのように表現すれば、二面性のあるキャラクターとしても表現可能。面倒そうな感情を表現する台本として。

「はいこれ、ちょこっとだけどバレンタインチョコです。みんなで一緒に作りました。いえ正確には『みんなが』ですかね。私は調理係に加えてもらえませんでした。いえ、でもラッピングは頑張りましたので、それではどうぞ。チョコレートです」

狙い

料理できない系女子。それでもできることを頑張る健気さ。「私は調理係に加えてもらえませんでした」というセリフを自虐として言うのか、哀しみとして言うのか、怒りとして言うのか、疑問として言うのかでだいぶ遊ぶ余白を設けている。卑屈や気乗りしない台本としても。やることはやりました~、みたいな。


義理チョコ(個人)

「チョコレート、持ってきたわよ。ちょっと、目の色変えないでよ。別に深い意味はないし、去年もあげたでしょうが。まったく、今月もお小遣い厳しいってのに。感謝して、味わいなさいよ。どうせ、今年ももらえてないんでしょ? この恒例行事もいつか終わる日が来るのかしらね」

狙い

本命のカモフラージュとも本当に義理ともとれる台本。「感謝して味わいなさいよ」という点にどのような感情を込めるのかがミソ。「どうせ今年ももらえていないんでしょ?」をさぐりとして言うのか、呆れとして言うのか。最後の「この恒例行事も~」を相手に向けて言うのか、独りごちるのかという点で、演技上演出しやすいように作ってある。


友チョコ

「アキちゃん、昨日チョコレート作ったよ。ほら、どうかな? ベリーソースで模様描いてみて、結構上手に固まってると思うんだけど。でしょでしょ、3種類ぐらいチョコレート混ぜて、香りにもこだわったの。へへ、じゃあ一個あげるね。張り切って作り過ぎて紙袋パンパンだよお。あ、もし余ったらもう一個あげるね、それじゃ!」

狙い

作り方の工程やらをことこまかに説明されている時点で、お前は本命ではない。無邪気さや、無邪気さ故の残酷さを表現する台本。あくまでフレンドリーに。アキちゃん=男女どちらともとれる名前にしている点もポイント。


本気(緊張気味)

「ねえ、今日バレンタインだけど、もうチョコもらった? もしよかったら、私のチョコ受け取って欲しいの。ううん、迷惑だったら、捨ててくれてもいいから。でも、そのときは私の見えないところでやってくれると嬉しいかな。いや、もちろん一番はおいしく食べてくれることなんだけど……、チョコ、受け取ってくれますか?」

狙い

渡したい意思はある。だけれど、結局「お伺い」を立ててしまう緊張感を出した言葉。本気のときは勢いでしゃべるから「捨てて」だなんて失言だってしてしまう。もちろん肝要は最後の「受け取ってくれますか」。

本気(意思強固)

「今日が何の日か、なんて言うまでもないわよね。はい、チョコレート。あなたのために用意してきました。あなたが甘いものが苦手という点も考慮して、ビターテイスト甘さ控えめで作ってます。すでにあなたがチョコレートをいくつか受け取っていることも知っているから、手提げも大きめのものを用意しました。想いは今口で言ってもいいし、メッセージカードを添えてもいます。返事は今くれても後からでも構わないわ。ひとまず、どうぞ。私からのチョコを受け取って?」

狙い

外堀から埋めるタイプ。「急にどうしたの?」「渡す相手間違えてない?」「甘いもの嫌いなんだ」「実は全員断ってるんだ」「もう持ち運べなくて」「ごめん時間がない」――言い訳できるものならしてみろ。という鋼の意思を体現してください。


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