食べ物だけではなく、食べている様子混みで、映像にナレーションをあてる台本。
「今日は、『一日108個限定? やみつきコロッケ』をご紹介です。こちらの角の精肉店で一個60円です。ご夫婦で三十五年、創業時から変わらぬ値段とお味だそうです。では、ひとついただきまして、(食べる)ホクホクのじゃがいものやさしい甘み。こちらのじゃがいもは奥様が日の出前から丹念に潰していることから『やみつき』なんだそうです」
「やみつき」ではなく「闇突き」かい、そんで除夜の鐘にちなんでるんかーい、というオチの台本。音だけでは違いがないので、それをどううまく伝えるかの手腕を問う台本。受け取る動作や、コロッケを渡してくれた人物がいることなど、要所の動きも意識したい。他にむずかしポイントとして「角の精肉店」を「門野精肉店」と混同させないように言うことと、「じゃがいものやさしい甘み(がたまりません)」のように、味の感想を言外にしているので、どうそれを台詞に乗せるか。じゃがいもの熱さなどを表現するのか、など。
「こちらの創作料理、実はNG食材の『羊の脳みそ』がソースに使われている。はたして挑戦者のグルメ太郎は、NGに気づくことができるのか? それともおいしくいただいてしまうのか? さあ、いざ実食。口に運び、噛んでいる、ああっと表情が怪訝だ、どうだ、飲み込んだ。ああーっと、おいしくいただいてしまった。挑戦失敗、シェフチームに10ポイントが入ることに」
前半は緊張感を演出することを、後半は実況を目的とした台本。前半で盛り上げて盛り上げて、後半では「表情が怪訝だ」というどっちにも転ぶ状況を解説する台詞をうまく使いたい。(味の違和感から怪訝なのか、味がわからなくて苦笑いしながら怪訝なのか)。最後の「おいしく」「いただいてしまった」という通常ではなかなかありえない相反する表現の組み合わせも上手に使いたい。おいしくいただいた、と判断できる動作をグルメ太郎が行う「間」も忘れずに。
「吹雪が続くこと十日。山野は食料と薪の調達のために、山を下りることを決めた。山小屋に残された最後の備蓄を火に掛ける。缶詰を直接温める。通常ならあり得ない。だが、最後の飯と薪。だからこそ、山野は己の活力とするために、山野は惜しまなかった。口が焼けそうだ。だが山野はスプーンを口に運ぶ。火傷ができるのも、もう最後かもしれないから」
短い文章で区切ることでリズムと緊張感を作っている。「飯」という表現や「山野は」の繰り返しで、山野の状況に聴衆の意思が向くように仕向け、「口が焼けそう」「スプーンを運ぶ」「火傷」という五感に訴える表現など「生々しさ」を出すための材料は揃えてある。そこからの最後に『もう最後かもしれないから』をどううまく使うかが鍵。ナレーションとするのか、心の声(モノローグ)とするのか。
「お誕生日おめでとうベイビー。今日は生まれてはじめてのアイスクリームを食べてみようね。ああっ、冷たいかな。ほら、ペロペロしてごらん、冷たいね。どう? どうかな? おいしい? おいしい、おいしいねえ。もっと食べる? ふふっ、一回お口の周りを拭き吹きしようね、持ってみる? あっそっち持つと、溶けちゃったね。うーん、泣かないでぇ」
自由にやっていただければ。
ちゃんと赤ちゃんの動作や表情やリアクションを、こちら側のリアクションで伝えることが大事になるかと思います。赤ちゃんの感情って、比較的大人にも移りやすい(ミラーリング)ですよね。