「かあさま」(依存度)

語り手・・・息子、あるいは娘

聞き手・・・母親

(場面設定)

母親に対する依存度の台本

 


褒めてよ! かあさま

「かあさま、聞いて。かあさまが好きなガーベラの花がたくさん咲いてたから、いっぱい摘んできたよ。咲いてるの全部摘んできたから、ちょっと枯れちゃっても大丈夫だよ。どうしたのかあさま? 嬉しくて声が出ないの? それとも、お花、足りなかった? 次はもっと取ってくるから、また褒めてね、かあさま」

狙い

「褒めてもらうこと」に焦点がいきすぎて、花を軒並み摘んでしまうことや、褒めてもらえない理由が「花が足りないから」と認識するような、母親以外の価値観がずれた子供。無邪気ゆえの残酷さも表現できるような台本。一般的な価値観よりも母親を最上とすることで、ぶっ飛んだキャラとして演出しやすいものとした。尚、母親に褒めてもらえた(嬉しいと感じている)のか、否か(花を摘み切ったことを悲しいと感じてるか)を選ぶこともできる。


助けて、お母さん

「痛い、痛いよ、お母さん。ぐす……あいつらが、いじめるんだよ。痛いって、やめてって言ったのに。お母さんは味方だよね? 助けてくれるよね? こっちに来てよ、お母さん。痛いの、痛いんだよお。あれ、目が、おかしいな。どこ、お母さん、どこにいるの。お母さん」

狙い

「お母さん」を5回分配置した。ひとりごと、呼びかけ、主語、使い分けが可能。視覚を潰すことで距離感を自由に設定できるようにしたうえ、満身創痍とすることでお母さんは幻覚でもよい。自由度の高い台本。縋るように言ってもよし、母の愛を疑ってもよし、「目が……」の部分は泣いたことにしてもよし、自由度は高い。


行ってきます、かあさん

「今から行けば日暮れまでには帰ってこれると思うし、もし遅くなるときはそのまま叔父さんのところに泊めてもらうから。だから、母さんもちゃんとご飯を食べてね。昼の分と夜の分はそこに置いておくから。ご飯食べてから薬を飲むんだよ? 熊よけの鈴はちゃんと持ったし、大丈夫。いつまでも子供じゃないんだから。行ってきます、母さん」

 

狙い

依存というよりは、「安心させたい」「いつまでも子供扱いされたくない」という点での母親依存。背伸びをしているのか、本当に子供扱いをうんざり思っているかで温度差を使い分けられる台本。


かあさま

「かあさま、今日もいい天気だね。最近、背が少し伸びたんだ。あんまり大きくなると、ウェンディがうるさいんだけど、毎日歩いてるおかげかな? 自分じゃどうしようもないから仕方ないよね。かあさまも『私より大きくなって可愛くない』って言うかな。今日はアップルパイを焼いてきたよ。かあさま好きだったよね。昨日のサンドイッチは持って帰るね。それじゃ、かあさま。また明日来るね。おやすみなさい」

狙い

一方通行の依存。「食べもしない料理を墓前に供える」「毎日来ている」という点が台本上の情報となる。料理に自信はあるのか、なぜウエンディがうるさいのか、それをこのキャラはどう感じてるのか? 余白の部分をどう伝えるかとう力量を試される台本。墓石の下に眠る母親におやすみなさいという挨拶をどのような気持ちでいうのか(キャラにとっては母親が「おやすみなさい(=永眠)」しているのは好ましくないはず)、というやり応えを作ってみた。


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